エピソード1
#010 ピアニスト 角野隼斗
「日本じゃないどこかに行かなきゃなって、最近すごい思っていて」 取材が始まったのは、2022年12月初め。大阪で行われる師走恒例のコンサートの楽屋で、角野はこう口にした。 注目を集める27歳のピアニストは、クラシックだけではない、ジャズ、ポップス、ロック、ゲーム音楽など、多様な音楽を吸収していた。 なぜ角野は日本を離れるのか。どのようなピアニストを目指しているのか、知りたくなった。 取材を進めていくと、ある演奏動画の撮影現場では、録音済みの音源があるにも関わらず「この場所の現場音(生音)で収録したい」と言い、あるレコーディング現場では、決まっているテンポがあるにも関わらず「クリック(ガイド音)に支配されたくない」と言う。 一見わがままにも見える言動だが、妥協しないその姿勢から、一般人では分かり得ない、角野が大切にしている音楽への思いが垣間見えた気がした。 クラシックを軸に置きながらも、ジャンルを越えた音楽活動を行う角野だが、「自分の活動が世界的に見てもユニークなのか知りたい」「もっとたくさんのことを学びたい」と、その姿勢は常に貪欲だ。 そんな角野は2023年1月より、自身最大規模の全国ツアー“Reimagine”を開催する。 「300年前の作品と現代の作品を並列に捉えることでクラシック音楽を生きた音楽として“再構築”する」をテーマに、古い音楽と現代の音楽を交互に弾くという、クラシックのコンサートとしてはユニークな試みを行う。 演出にもこだわり、アップライトピアノの音色を変化させるため、調律師と相談して革やフェルトを使った特製のエフェクターを付けるなど、コンサート成功のため、労を惜しまない。 果たして、角野はどのような演奏を繰り広げ、どのような景色を私たちに見せてくれるのか!? 角野の目指すべきピアニスト像はどこにあるのか。